2021年に始まった「須崎市海のまちプロジェクト」。プロジェクトのきっかけは、創業100周年を迎えようとしていた高知信用金庫と、市庁舎の老朽化に悩む須崎市との出会いでした。
高知信用金庫は1923年、須崎町(当時)で「須崎信用組合」として創業しました。100周年を迎えるにあたり、県内各地の店舗改修を進めており、その中で、まだまだきれいな机や椅子が残ってしまいます。
「資源の有効活用をしたい」
そう考えた高知信用金庫が須崎市に什器類の寄付を申し出ます。両者は2020年9月に「ふるさとの未来貢献パートナー協定」を結んでおり、その一環としての事業でもありました。
一方、須崎市役所にとって、老朽化した備品の更新は長年の課題です。高知信用金庫からの申し出を楠瀬耕作市長が歓迎し、引き渡しが決まります。
プロジェクトが大きく動いたのは、ここから。
高知信用金庫が市庁舎の全面的な改修を提案。什器処分にかかる予定だった経費に上乗せして、リノベーションに必要なデスクやワゴン、椅子などの新品を寄付することを決め、床もきれいに張り替えることになりました。
また、イノベーションの最中にも行政サービスを止めるわけにはいきません。許された期間は土日の2日間。須崎市役所職員も高知信用金庫職員だけでなく、オフィス空間デザインを手掛ける株式会社秀光(本社・川崎市)や高知信用金庫の改装工事関係業者も参加して、総力を結集しての作業です。
こうして、「みんなで創ろう須崎市庁舎リノベーションプロジェクト」が始まりました。
高知信用金庫は98年前、須崎の町役場の一角にそろえられた、1組の机と椅子が始まりです。須崎の役場がなければ、高知信用金庫も生まれていなかったのです。だからこそ、市民サービスの拠点となる市役所庁舎に、高知信用金庫が顧客サービスのために作った什器類を再利用してもらうことは、歴史的な観点からも非常に意義があることだと考えています。
こうして完了したリノベーション。古びた壁も看板も、磨き上げると輝きました。明るくなった市役所を、喜ぶ市民の声も聞こえてきました。
「須崎市だけでは成しえなかった事業」と楠瀬市長は語ります。
「ひとり」では難しいことも、「みんな」でならばできるはず。
だから、一緒にみがく。
こうして始まったのが「海のまちプロジェクト」です。