大漁堂コンセプト

  • 地域の恵みを一堂に

    かつて、港湾のまちとして栄えた
    須崎市中心街。
    古き良き時代の面影が残るこのまちに、新しいスポットが誕生しました。
    その名もめでたい、「須﨑大漁堂」。
    ここが地域の結び目となって、新たなつながりが生まれます。

    須崎中心市街地に新スポット誕生

     須崎市の中央商店街に建つ、朱色の木組みに囲まれた建物。2022年12月10日にオープンした「須﨑大漁堂」は、まちの人たちが気軽に集える憩いのスポットであり、奥四万十地域の「いいもの」をギュギュッと集めたアンテナショップでもあります。
     須﨑大漁堂のコンセプトは、人々が集まる「お堂」。朱色の木組みは神社を、建物の内部は境内をイメージして作られています。近隣には神社やお寺、小さな祠、お地蔵様などが無数にあり、ご利益にあふれる縁起のよいまち。地域の人たちの笑顔が集まるお堂です。
     シンボルマークは、須崎の宝である魚たちが喜び、船に飛び込んでくる様子を描いた宝船。魚に祝福されるまちをイメージしています。「須﨑大漁堂」のロゴは古い町並みに合うレトロな手描き文字を使い、屋根の妻飾りをあしらっています。
     内装は和のしつらいで、京都の要素も多く取り入れました。その背景となるのが、このまちの歴史。京の都から藤原経高が謀反の罪により津野山郷に入り、津野氏として勢力を伸ばし、須崎市は津野氏の荘園であったといわれています。津野一族が築いた須崎城の北に賀茂神社、東に須賀神社、南に須崎八幡宮がある配置は京都のそれと似ていて、碁盤の目のように整えられた市街地に間口のせまい町屋風の建物が並んでいるのも、京の都を想起させます。

    このまちへの思いをカタチに

     須﨑大漁堂は、古い町並みに調和し、まちをイキイキと彩る建物として設計されました。朱色は、人々を活気づける「血潮」の色。自然素材のベンガラの赤色を主として、まわりの古い町並みと海・山のある風景に合うように調色しました。夕暮れになると約70個の提灯に灯が点り、どこか懐かしい幻想的な風景を作り出します。
     また、「時間が作り上げてきた風景、地域の宝が詰まったこのまちにふさわしいものを」と、本物にこだわり抜いているのも特徴。木組みも提灯も、そして中のインテリア、商品に至るまで、吟味を尽くした逸品ばかりです。

     須﨑大漁堂の中でひと際目を引くのが、まちの魅力を伝えるデジタルサイネージと8ミリフィルムの映像。手掛けたのは「外の人」の視点を持つ3人の若者で、横井秀光さんが企画・プロデュースを担当し、平牧和彦さんは8ミリフィルムのムービーを、NAGAさんは浮世絵風の現代錦絵を制作しました。「みなさん、『なんちゃあないで』とおっしゃいますが、海があり、祭りがあり、おいしいものがあり、人があったかいまち」「神様がたくさんいて、伝説がカタチとして残っているのもおもしろい」と、肌で感じとったことを余すところなく表現しています。

     ここでは、須崎市や奥四万十のいいもの・おいしいものを提供、販売していて、飲食はカウンターで注文するカフェスタイル。食材の一つ一つに、地域で育ち愛されてきたストーリーがあり、まさに宝庫というべきラインナップ。これも須﨑大漁堂の自慢です。
     ここに住む人、訪れる人たちの憩いの場となる、まちのリビングのような空間を目指しています。
       この須﨑大漁堂が生まれたきっかけは、楠瀬耕作須崎市長の「須崎のまちに昔のようなにぎわいを取り戻したい!」という思いから。思いを同じくする須崎発祥の高知信用金庫の山﨑久留美理事長に声をかけ、5年がかりで須崎のまちを活性化させる「海のまちプロジェクト」を発足。100年前、このまちの人たちの共同出資により誕生した高知信用金庫が、「地域へのご恩返し」として全面的にバックアップしています。
     今後もこの中心市街地の活性化事業を継続し、来年中頃には新鮮な須崎の魚が食べられる「須崎のサカナ本舗」をオープンする予定で取り組んでいます。

  • このまちにふさわしい本物を

    須﨑大漁堂の見どころは、質の高い本物と作り手の思いが見える作品たちです。
    重厚で美しい木組みは、この道45年の棟梁・式地広幸さんの手によるもの。

    四万十ヒノキを使い、寺院を造るのと同じ伝統工法で組み上げました。木を削って仕口や継ぎ手といった凹凸を作りはめ込んでいく、高い技術を要する工法で、まさに熟練の技。最近は日本建築の仕事も少なくなり、「龍馬の生まれたまち記念館」などを手がけてきた式地さんは、「久しぶりの大仕事に腕がなった」と笑みがこぼれます。

     その木組みに吊るされた約70個の提灯は、大阪府池田市で江戸時代から続く専門店「明珍商店」の製。一つ一つ文字や絵柄を手描きした提灯は、一日に作れるのはほんの数個。11代目社長の片山茂幸さんは「大きい提灯ですから、約70個に灯がともるのは壮観でしょう。ぜひ見に行きたいですね」と、まちを彩る明かりを楽しみにしています。

     須﨑大漁堂の中に入ると、パッと目に入るのが大きな木のオブジェ。これは天然の松の皮を剥いで加工したもので、木と植物の空間アートを手がける西畠靖和さんの作品です。松を選んだのは、ここが神仏の多いご利益のまちであり、めでたさを添えたかったから。枯れて伐採された樹齢300年以上の松の木に新たな命を吹き込んだこの作品は、このまちの再生を見守るシンボリックな存在です。西畠さんは、「持っている素材の中で、一番のお気に入りを選んで持ってきました。この松の下に座って、木漏れ日を感じてほしい」と話します。

     パーティションや和室の飾り窓に使われているのは、地元須崎産の虎斑竹。淡竹の仲間で、表面に模様が入っていることから「虎斑竹」と呼ばれ、日本でも須崎市安和の竹林にしか育たない希少な竹です。1916年に牧野富太郎博士が「トサトラフダケ」と命名しました。他の土地に移植しても美しい模様が出ないといい、須崎の気候風土が育てた産物です。

     これを切り出し、油抜きして曲がりを取る製竹加工を行うのが、地元専門業者の「山岸竹材店」。天然の美しい模様と素朴な竹の風合いが、上品な「境内」の雰囲気を作り上げています。4代目社長の山岸義浩さんは、「竹を使う文化を次世代に繋いでいきたい。須﨑大漁堂をその一歩にしたい」と言い、より多くの人に虎斑竹の魅力を知ってほしいと話しています。
     堂内のアンティークな家具や装飾品のコーディネートをしたのは、金子紘一さん。35年にわたりイギリスやヨーロッパのアンティークを買い付けてきた目利きであり、自身の手で美しく蘇らせるリペア職人でもあります。マホガニーのサイドボード、ちゃぶ台をリメイクしたテーブル、魔除けの鬼瓦など古き良き時代のモノたちが、古い町並みにそっと寄り添います。

     カウンターや松の木を囲む八角形のテーブル、カフェテーブルなどは、本物にこだわるバンクオフィス家具の専門業者「秀光」の特注品。「いい物は長く使われる」というコンセプトのもと、居心地のよい空間を作り出しています。そこに調和するのが、和テイストの張地を使った椅子、アイアンの商品棚、シンプルな食器など、高知市内の「ウフ」がセレクトした家具や雑貨。さまざまな要素がバランスよくミックスされ、楽しい空間を演出しています。